平成17年度 教育座談会
平成17年10月22日(土)13時〜16時、エスポワール愛媛文教会館において、次の「テーマ」「趣旨」による教育座談会が行われた。
◎テーマ 「子どもを守るために」
◎趣旨
変化の激しい時代を生き抜き、これからの日本を担う子どもたちを育てるためには「たくましく生きる力」などの育成が重要である。また、多様な社会環境の中では、子どもの教育は、学校だけでは充分な役割を果たすことは難しくなってきている。
これからは、学校、家庭、地域社会が連携を深め、それぞれの立場において、その役割や責任を果たし、教育に努めなければならない。
そこで、今回は、危機管理に視点を当てて、学校、家庭、地域社会が一体となって教育に取り組む連携のあり方について検討していきたい。危機管理と言っても、その領域は広範囲で多岐に渡っているため、焦点化を図り、子どもを事件・事故等から守り、安全で安心して生活が営まれるための方策について話し合う「子どもを守るために」をテーマに設定した。
それぞれの立場から「子どもを守る」実践を通した活動から、課題や今後の方向性、学校教育への提言など、県下各界の皆様方のご意見を拝聴し、今後の愛教研活動に資する。
◎座談会の骨子 |
・活動の現状 ・活動の成果と課題
・学校教育に望むこと
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◎出席者(敬称略) |
四国中央市少年育成センター指導員 |
片岡 徹臣 |
カウンセリングルーム青い鳥 主宰 |
柳原 丈廣 |
松山地区 保護司 |
土居 茂男 |
江戸岡おやじの会 代表 |
高田 耕次 |
愛南町 行政協力員 |
野平 弘箕 |
愛教研法制情報局長 |
久坂 文治 |
愛教研情報宣伝部長 |
(司会) |
加藤 和子 |
愛教研情報宣伝部副部長 |
(記録) |
石川可奈子 |
愛教研情報宣伝部副部長 |
(記録) |
吉田 錦也 |
はじめのあいさつ 局長
子どもを守るために学校では安全管理や防犯教育の充実等に取り組んでいますが、学校だけでは十分でありません。学校、家庭、地域社会がより一層の連携のもと、それぞれの立場でその役割を果たして頂くことが子どもを守るために重要であると考えます。皆様方の日ごろの活動を通したご提言、ご助言をお願いします。
◎活動の現状
四国中央市少年育成センターの活動とは 片岡
合併により誕生した四国中央市少年育成センターが最初に手がけたのが不審者対策だった。今年の四月から現在まで五十数件、月平均八件ほどの不審者情報が寄せられた。センターへ寄せられた不審者情報は、市内の全小中学校や幼稚園、保育所、公民館等へ配信している。
不審者から子どもを守るために、学校とPTA、補導員等に呼びかけて「守る家」を設置した。「守る家」には入り口にステッカーを貼ってもらい、その場所がどこにあるか分かるように各校区の地図に写して配付し、センターでは台帳に整理している。また、不審者情報が入ると速やかに現場へ出向き、近隣住民から事情を聞き取る等の取組をしている。現在では、市内全小中学校にそれぞれ十五〜百軒程度お願いできている。
次に「五つの約束」という防犯ビデオの貸し出しをした。全国防犯協会が作成し、マンガで分かりやすく解説したビデオのため、市内のほとんどの小学校から申し込みがあった。次に、青少年犯罪を何とかしなければならないということで、取りかかったのが万引きである。センターでは、万引き防止のために学校や警察等の連携を密にして取り組んでいる。
これら増加する青少年犯罪に対して地域の教育力不足が指摘されているが、では、具体的にどうすればよいかとなるとそこから先がない。センターとしても一番頭の痛いところである。一部の中学校にもおやじの会があり、協力して夜9時から2時間ほど巡回している。今の子は、深夜三時四時に徘徊し、単車窃盗や恐喝、学校荒らし等をするため、学校・警察・センターも頭を痛めている。
今、子どもたちを脅かす三つの危機 柳原
カウンセラーという立場からテーマを捉えてみた。まず、今の子どもたちは二つの面から危機に陥っていると私は思っている。それは、不審者等の外部から受ける攻撃と、もう一つは、子どもの内面から起こってくる心の崩壊という問題である。
2000年以降、青少年が起こした重大殺傷事件は二十三件を数え、今年だけでも十件を超えた。これらの事件を起こした子どもたちの背景を考える必要がある。その生い立ちや家庭環境、事件を起こすまでに受けた本人自身の被害体験などにも目を向けなければならないと思う。私のカウンセラーとしての経験からも、友人関係や教師との関係、あるいは親子関係や家族関係の中で受けた心の傷が事件を起こす引き金や背景になっていると考えられるからである。
さらに私は、初めにお話した二つの危機の他にもう一つの危機を感じている。それは、家庭内における虐待である。虐待防止法成立後、通告義務ができたために虐待の実態が明るみに出てきた。父親や母親から受ける暴力的虐待だけでなく、養育の放棄や極端な愛情不足であるネグレクトが、子どもの心を蝕んでいると感じている。
保護司としての関わり 土居
保護司という仕事は、具体的にどのようなことをしているかというと、一人の人を預かった場合、一か月に二回の割合で本人を保護司の所に来させる。逆に一か月に一回は保護司の方からその家庭に出向き、本人以外の家族と話をする。そうしなければ、本人とその家族状況が十分に把握できないからである。 次に、未成年者の起こす事件等はいろいろとある。その中でも、特に中学生や高校生が起こす事件として最も多いのがやはり交通違反である。その他には、恐喝や暴行事件が多い。また、友人同士で物を売買した際に起きたトラブルから大きな事件に発展する場合もある。
我々保護司の仕事は、無報酬である。いわゆるボランティアであるからこそ、本人やその家族に対して、強く指導することができる。その関係が良いのだと思う。
江戸岡おやじの会の活動を通して 高田
六年前に私がPTA会長をした時、子どもたちのあいさつができていないという話が出た。この問題をどうするかということから「江戸岡おやじの会」の活動が始まった。その当時、PTA活動はほとんど母親ばかりで、わずかな父親が役員にいるだけだった。「これではつまらない、もっと父親を引っ張り込もう。あいさつも、お互いの顔を知り合えば自然とできる。子どもたちと父親たちが触れ合うためには、一緒に遊ぶ機会をつくればいいじゃないか。」と考えた。これが「江戸岡おやじの会」のスタートだった。
何をして遊ぶか話し合った結果、最初にやったのがデイキャンプだった。昼に子どもたちを集めて、夕食やキャンプファイヤーの準備をしながら一緒に遊んだ。それから毎年実施している。二年前に
は、小学校の校舎改築のため、慣れ親しんだ旧木造校舎の教室に泊まったりもした。
恒例のデイキャンプや年末の餅つき大会の他に二か月に一度程度第三土曜日に学校開放行事を実施している。会員の父親の職業を活かした内容で子どもたちと遊ぶ活動を継続している。最初は、土地家屋調査士をしている父親が、学校改築の機会に「学校を測ってみよう」と子どもたちと測量をしながら遊ぶ活動をした。ある時は、清掃業に携
わっている父親が指導者になって、リサイクル活動をしたり、私は、左官業をしている関係で、「材料を工夫して、大理石のようなピカピカの泥団子を作ろう。」等という活動も実施した。
また、この活動を実施するにあたり、市や公民館から講師料等の助成金が支給されるが、それは、すべて「おやじの会」の活動費に充てている。なぜなら、子どもたちが参加する際になるべく無料で参加させてやりたいからである。参加する子どもたちの中には、経済的に苦しい家庭があるかもしれない。いくら「おやじの会」が収入源のない組織だといっても、参加する子どもたちから材料費等を集めなくて済む様にしたい。会員同士が酒を交わしながらいろいろと話し合った。その結果、これ以外にも経費を賄う手段として、それぞれが地域のお祭りに参加して謝礼をもらったり、市の行事に出店を出したり、自分たちが出費する飲み会の会費残金を毎回持ち寄ったりしながら活動費に充てている。このように、地域や行政の協力も頂きながら手作りの活動を続けている。
地域の行政協力員としてできることは何か 野平
具体的に取り組んでいるといえる活動はないが、地域の子どもたちが安全に登下校できる環境作りであるとか、あるいは、子どもたちとの接点をどこに見出していけばよいかということを自分なりに考えて活動している。
行政協力員として何ができるのか。手始めに地域の行事を通して子どもたちとの関わりを持っていこうと考えた。具体的にいえば、地域の夏祭りやお盆の行事、秋祭り等の準備や練習会場に度々顔を出して子どもたちと話をしたり様子を見たりした。そこで見たり聞いたりした子どもたちの生活の様子等を、各地区の行政協力員が集まる会議などで情報交換し、その場で得た情報を該当学校へ連絡している。また、学校側から協力要請があったことについては、できる限り関わっていこうと考えている。地道な活動ではあるが、行政協力員という仕事の中で関われることは何かを模索しながら活動している。
◎活動の成果と課題
活動における課題 片岡
成果を問われるのが一番辛い。ただし、平成十三年度の旧川之江市では少年犯罪が多発していたが、市内の各機関が協力して取り組んだ結果、その後犯罪件数が減少した。
今後の課題は、山積みである。都市化や広域化が進むに連れ、少年犯罪の増加や低年齢化が懸念される。根本的な解決策といったものは無い。学校・家庭・地域の連携を強化していくしかないが、言葉で唱える事は簡単だが、一歩踏み出して具体的にどうすればよいかとなると、その先がなかなか出てこない。学校に更なる指導強化を望んでも、現状で手一杯の感がある。各地域でも公民館活動等いろいろな取組をしているが、継続的で体系的な取組となると限界がある。やはり、家庭教育が原点である。家庭が崩壊してしまうとどうにもならない。非行に走る子どもの家庭は何らかの問題を抱えている。皮肉なことに、家庭の教育力を向上させるために様々な講演会や諸会合を開催しても、参加してくれるのは問題の無い家庭の親ばかりで、心配な家庭の保護者はなかなか出席してくれないのが課題である。
カウンセリングを通して 柳原
成果といえるものではないが、カウンセリングの活動を通して聞くことのできた心に残る話を、三つばかり紹介したい。
ある中学生から、「私は、不登校という最善の選択をしたおかげで、自殺することも、非行や犯罪を犯すこともなくて良かった。いじめられてとても辛い状況ではあったが、不登校の時間の中で、学校や家族から温かく見守られていることに気づき、自分をもう一度見つめ直すこともできた。」という話を聞いた。
また、十数年前に関わった当時中学生で、現在三十歳を超えたM君が、先日私を訪ねて来てくれた。その時、彼が「中学生の頃は学校に行けず、高校・大学でも辛い壁にぶつかったが、その挫折のおかげでしっかりと生きていくことができるようになった。挫折は、人間を強くする。」と話してくれた。
そして、ある相談者である母親は、「子どもが不登校になったおかげで、家族関係が良くなった。それまでは、主人や姑と度々けんかしていたが、子どもの問題に皆が向き合う事で家族関係を修復することができた。考えていた離婚も思いとどまり、本当の母親になることができたような気がする。」と話してくれた。
今、子どもが直面している様々な危機に大人が真剣に向き合っていけば、そこから多くのことを学び、マイナスをプラスに置き換えていくことができると思う。
保護司の立場から 土居
担当する人たちと会ってみると、保護司の所に来る人は、本当に相談相手がいない。だから、相談相手に保護司がなるというのが一つの成果である。本人が、月二回来るので、話を聞くと、親の悪口、先生の悪口、社会の悪口…を言うのだが、ずっと聞いていると僕にもこんな悪いところがあるという自己反省を必ず言い出す。それが、保護司としての成果ではないかと思う。
課題はやはり、再犯の問題だ。親の極端な溺愛と極端な放任が課題である。
活動の3つの柱 高田
「おやじの会」の活動の中では三つの柱がある。第一は子どもに全てをさせようということ。ナイフとカッターを使う工作は子どもに毎年させている。危ないとは言えるが切って痛みがわかればいいというのが我々の考えである。
また、今の子どもは、同年代の子どもとしか会話ができない。ゲームのような引きこもりをなくして、六年生が一年生の面倒をみるという昔の流れに少しでもしようと活動している。同じ分区の低学年と高学年を必ず一緒にしている。そして、低学年は、高学年の言うことを聞き、高学年は低学年の面倒をみる。これが、第二の活動である。
第三が、よその子を叱れということである。我が子は当然叱る。よその子は叱りにくいがそれをやらなきゃいけない。
話は変わるが、ボーイスカウトでは指導者が二人いる。命に関わる危ないことをした時、よく他人の子をそこまで叱れるなという位叱る。その指導者によると自分で怪我するのは仕方ないが、他人を怪我させるくらい愚かなことはない。よその子を叱る時は、その位真剣に向き合っている。
成果は、子どもたちと知り合いになれることである。町で会っても、いろいろな話ができるようになってきている。「おやじの会」の参加は、百三十世帯中、六十人程度である。実働は三十人位である。その活動の中で一生懸命やっている子どもたちは、何か言えば、反応が必ず返ってくるようになった。
課題は、子どもが卒業しても残ってくれる親もいるが、新しく入ってきた親の中では「おやじの会」は知っていても、大変だという噂で、おやじの会に入るのが滞りかけている。お互い仕事があるので、参加できる範囲でというのがモットーなのだが。
地域が子どもに関わることが大切 野平
地域の住民が近所の子どもたちに関わる機会が少なくなったように感じている。
最近、子どもが犯罪に巻き込まれる被害が多発していることで、学校でもその対応策としての指導の1つとして、見知らぬ人との関わり方についての有り様に神経を注視した指導を徹底しているためか、一方的に声をかけても返事やその態度に違和感を覚える。
誠に淋しく困ったことである。これは子どもたちの問題よりも、地域住民の普段からのコミュニケーションの有り様の問題なのではなかろうか。
子どもとの関わりも大切なことであるが、大人同士の日頃の姿勢が問われているような子どもたちからの警鐘なのかもしれない。
◎学校教育に望むこと
子どもの目線で 片岡
少年育成センターは、生徒指導の先生方と何回も寄って話し合っている。月に一回は情報交換をする。昨年までは、警察の方も入られていた。学校との連絡も密にやっている。校長、教頭ともよく話合いをする機会がある。ただ、物事が起こった時には早めに対応してほしい。そして先生方へのお願いは、その子その子に合わせて対応してほしい。学校と行政は一線あるが、全て情報交換ができる関係であってほしい。子どもへ目線を下げて、裸の付き合いをするような先生が多くなってほしいと思う。
教師への5つの提言 柳原
私自身が学校の中にいた者として考えさせられること、今、カウンセラーとして親と話をする中で考えさせられることをお話する。
1つは、先生方は特に忙しくなっているが、子どもが起こしている現象や非行などの背景に目を向け、親との連絡、連携、協力を重視して、子どもを指導をしていくことの大切さである。
2つ目は、親とのよい関係を作っていくということ。以前は、学校に来ている子どもに勉強を教えていれば生活面での教育は親がしてくれていた。しかし、今は、親と教師が一体となっての教育が強く求められる時代である。親や環境が悪いと言っていては子どもの教育はできない。私はカウンセリングの中で、親にも、「先生とのよい関係を作って下さい。」と話している。親にとって学校は敷居が高いものである。先生の方から出向いて良い関係を作って頂きたい。良い関係作りのキーワードは、迅速・誠実・責任。何かあればすぐに飛んでいく。そして一生懸命関わり、責任逃れをしないことである。迅速に、誠実で責任ある関わりをしていけば、親も心を開いてくれると私は信じている。
3つ目は、先生自身がストレスを溜めないこと。問題を担任や学校だけで、抱えこんでしまわない。一緒になってやりますよという、教師間のサポート体制が大事である。また学校が関係諸機関へSOSを出していく。学校も頑張りますから、知恵を貸して下さいと学校の弱さをどんどん出せばいい。
4つ目。親との信頼関係を築く基本は、とことん聴くことであると私は思う。どんなに攻撃的、批判的なことを言われても、最後まで聴くことができる教師は信頼される。教師が話の途中で「いや、お母さん、それはこうですよ。」と切り返すと、「先生は聴いてくれない、分かってくれない。」という気持ちになる。とことん聴くという姿勢を心がけて頂きたい。
最後に、守秘義務を守るということ。外部の協力を得る時に、秘密を守るということを必ず確認した上で連携していくことが大切である。また親にも、第三者に協力してもらうことの了解を得て、まず学校で協力者と顔合わせをし、一緒に話し合いながら進めていくようお願いしたい。
教師に望むこと 土居
現在の学校の先生は大変であると思う。現職の先生方に同情する。ちょっとでもいけなかったら、親が言ってくるということが多すぎる。
1点目は、情報をできる限り詳しく伝えることが必要。例を挙げると、携帯電話。今は小学生でも持っている子がいる。ヨーロッパの先進国やアメリカのある州では、携帯電話のプラス点とマイナス点を学校で教える。携帯電話の電磁波は十六歳未満の子どもには大変よくない。そういうこともあると、子どもや保護者に言って、それでも親が持たせるならそれは親の責任だが長所と短所を詳しく伝えておくことが必要だろう。
2点目は、自分で判断する力をつけていかないと、これからの世の中は生きていけない。アメリカのある州の話。ニューヨークに赴任した貿易商社の社員が家族を呼び寄せようとして、子どもが通う小学校を紹介してもらった。そこで、日本の教育とアメリカの教育との大きな違いを発見したそうである。日本は、学力と点数をよくするために、知識がメイン。アメリカの南北戦争についての宿題は、「もしあなたがアメリカ大統領ならどうするか。」というものである。つまり、アメリカの教育は自分で判断させる能力をつけるのがメイン。日本の宿題は、知識だけになってはいないか。子どもが自分自身を守るためには、あなたならどうするかを、教師が常に口にするのが大切だ。
今、学校では、いろんなことが言えなかったり、いろいろなことができない状態である。ある学校で、偏食指導をすると「子どもにも好きなものは食べるが、嫌いなものは食べないという人権があるでしょう。」と言ってきた親がいると聞いた。学校という集団の中で生活させていくには、命に関わることについては、無理にでもさせなければならないことがあると思う。
第3点目は、PTAと連絡をよくとって、学校の要望をPTAの声として伝えてもらうことも一つの手である。
4点目は、父親の特徴と母親の特徴を十分に発揮させてほしい。母親は、命を懸けて子どもを産んで育てないといけないので、どうしても子ども中心になるというのが特徴である。父親は、広い立場から物事を見るのが特徴である。保護者に対しても、父親の特徴、母親の特徴を十分に理解させてあげたらいいと思う。
教師としての威厳を 高田
先生は本当に忙し過ぎるんじゃないかと思うことが多々ある。先生方に特別言いたいことは特にはない。先生方は、「おやじの会」にもよく出てもらえるし、中学校のPTA役員をしていた時も、荒れていた子どもに対して、本当によくやってくれていた。ただ一点、個人としてお願いしたい。ある先生が、「子どもと同じ目線で、友達感覚で子どもと接したい。」と言われていた。一方で教員というのは、子どもを親から預かっているので、威厳を持って子どもに接してほしい。先生から見たら一対多数かもしれないが、子どもから見たら一対一である。親は大事な子を預けているのだから、しっかりとお願いしたい。団体教育を受ける上で、やっぱりしなければいけないのは家庭教育である。家庭でしっかりと子どもをしつけておかなければ、その場には出せないのではないかと思う。まず家庭がしっかりしてから子どもを送り出そうと、「おやじの会」ではいつも話している。
学校を外から見ると 野平
学校に勤めているときの外見はかなり視野の狭い見方だったように感じている。
教職員は世間の見方や考え方にへだたりがあるとよく説かれたことを今に思い起こすことがよくある。
職業観といえばそれにつきるかもしれないが、目一杯の取組に明け暮れしていたせいかもしれない。批判を受けても弁解の余地は自分としては何もない。
今の立場が一変して、外から学校の有り様について展望できる立場に立つことで気付かなかったことや、見えなかったことなど色々気になることがある。
日頃、学校現場で日々の指導や取組をしていく中で子どもや保護者、地域とのトラブルがよくあると思う中に、マスコミ等で「事が重大になるまでになぜ未然に対応できなかったのか・・・」と批判される文面を見ることが多い。その要因として考えられることとして、学級担任の熱心さがひとり歩きして、その責任感のあまり自分ひとりで解消しなくてはという思いで苦闘している間に、問題が問題を引き起こし対応のすべてを失い、結果として大変な事態に追い込まれるケースが多々あるように思う。
先生個人だけの対応では限界があるのではないか。一人で問題を抱え込まないで職場の仲間に相談を持ち掛けて問題解決の英知を受けたり内容によっては、管理職に早急に報告・連絡・相談を手早く済ませて早期に問題を解消していくことが大切だと思う。
今、職場での良い意味での縦の関係が弱体化しているのではないか。
保護者の高学歴化に伴うトラブルも増えているように思う。確かに時代の変化や社会の養成に応えるために高学歴社会になるのも当然のことと受け止められる。
知識を盾に構える姿勢に学校現場で色々翻弄されることがあるようだ。
また、大人になりきれない保護者が見え隠れしているようだ。保護者間のコミュニケーションを図るための学級PTAや教頭のリーダーシップのもとでのPTA研修会を通して好転していくよう努めてほしいと思う。
以前から言われていることに「学校の役割・家庭の役割」についてもしっかり話し合ってよりよい学校経営を目指してほしいと考える。
司会
今は学校だけでは子どもの命が守れないというように言われてきています。今日は大変参考になるご意見を頂きました。県下各地で皆様のように子どもたちを温かく見守って頂いてることを大変ありがたいと思いました。以上をもちまして座談会を終わりにさせて頂きます。
おわりのあいさつ 局長
今日は皆様方の特色あるご意見等を聞かせて頂き、勉強させて頂きました。活動の状況と課題については、それぞれのお立場でどのように子どもに関わり、どのような安全対策や指導に取り組んでいるかなどの現状や成果と課題についてお聞かせ頂き大変参考になりました。
また、学校に望むことにつきましては、子どもに目線を、そして事実だけではなくその背景を、家庭との信頼関係、教師間の連携、学校だけで抱え込まない、情報への配慮、あるいは判断力をつける、PTAとの連携、基本的生活習慣のしつけを、という様々な参考になるご提言を頂きました。今後の教育活動に生かしたいと思っています。相変わらず、子どもの安全を脅かす事件が後を絶ちません。私たちの学校や地域では、事件は起こるまいと楽観せず、事件は、いつ、どこでも起きるのだという危機感を持って、子どもの安全確保等に取り組んでいきたいと思っています。
なお、学校、家庭、地域とが一体になって取り組むためには、情報を提供することや体験活動を通して、地域の人とふれ合う機会をもたせることも大切なことだと思っていますので、そういった面にも力を入れていきたいと思います。
本日は長時間に渡りご提言を頂きまして、ありがとうございました。また今後ともどうぞよろしくお願いします。