平成16年度 教育座談会
 平成16年10月16日(土)13時〜16時、エスポワール愛媛文教会館において、次の「テーマ」「趣旨」による教育座談会が行われた。
 
◎テーマ   「地域との交流を考える」  
         ー総合的な学習の時間を通してー
 
趣旨
 現在、二十一世紀の新しい教育の構築を目指した教育改革が進行している。その中でも、これからの子どもたちが変化の激しい時代を生き抜くための資質として、「たくましく生きる力」をはぐくむことが必要である。また、多様な社会環境の中では、将来を担う子どもの教育は、学校だけでは充分な役割を果たすことは難しくなってきている。
 これからは、学校、家庭、地域社会が連携を深めそれぞれの立場において、その役割や責任を果たして教育にあたらなければいけない。
 現在、学校、家庭、地域社会においては開かれた学校、学社融合、地域コミュニティの構築などの活動を通して、子どもたちに積極的にかかわり、子どもの育成に努力している。
 そこで、今回は、「地域との交流を考える〜総合的な学習の時間を通して〜」のテーマを通して、学校や子どもたちと地域との交流に視点をあて、それぞれの立場で、交流を通した課題や今後の方向性、学校教育への提言など、県下各界の皆様方のご意見を拝聴し、今後の学校教育や愛教研活動に資する。

座談会の骨子

 

・交流の現状
・交流の成果と課題
・学校教育に望むこと

出席者(敬称略)







 

環境を守る会「夢遊友 うずい」会長
今治市立花カルチャーセンター館長
前松山市潮見公民館長
西予市連合婦人会環境部長
社会福祉法人立正保育園副園長

神野 敬二
藤田 和之
中西 昌健
恵美須明美
清家 静元
井上 弘子
大野 静雄
松岡 洋介
藤原 英子
愛教研法制情報局長
愛教研情報宣伝部長
愛教研情報宣伝部副部長
    〃    〃

(司会)
(記録)
(記録)
 
はじめのあいさつ 局長
 本日は、県内各地よりお集まりいただきありがとうございます。本日のテーマは「地域との交流を考える」です。学校では平成十四年度より改訂された学習指導要領で新しい教育を推進し、三年目を迎えています。子どもたちに考える力をはぐくむためには学校だけでなく、家庭や地域の力添えが必要で各学校ではご支援をいただき、特色ある取組が展開されています。
 そこで、各地域で温かいご協力をいただいています皆様方から、総合的な学習の時間のかかわりを通して、地域との交流の在り方や学校教育へのご提言・ご助言をいただきたく思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 
◎交流の現状
 
うずい川から学ぶ 神野
 「夢遊友 うずい」の活動についてお話したい。テーマは三つ。
@ きれいな川にする活動    
  河川清掃を春と秋に行っている。銚子の滝という立派な滝があり、全長五〜六キロの間のごみを取っている。今までに全部で二tトラックで四十九台分のごみを取った。
A 川を豊かにする活動     
  我々の活動の拠点に椿が三百本ぐらいある。ここを千年の森にしようと、まず、椿の下草刈りから取りかかった。うっそうと繁っていたが、手を入れて光が当たるようになると椿は花を咲かせた。小学校四年生に炭焼きの体験学習をやろうと計画したので、会員が素人のため一生懸命勉強している。また、あめごの稚魚の放流も行っている。
B 環境モラル向上のための活動
  ふるさとマス釣り大会では子どもたちがうずい川に来てごみを取っている。また、水源林のブナの木の植林も行っている。その他、水中昆虫調べ・ホタル祭り・椎茸の植菌・環境標語作り等の活動も行っている。
 
ボランティア活動でのかかわり 藤田
 私の方はカルチャーセンターの立場ということでお話したい。公民館は文部科学省の所管だが、この今治市立花カルチャーセンターは通産省の所管である。今治には小学校区それぞれに十五の公民館と立花カルチャーセンター(略称『館』)があり、全く公民館と同じことを行っている。現在、三十六団体の講座が開かれ、昨年度一万八千二百人の人たちが出入りしている。
 総合的な学習の時間では、中学校とは殆ど縁がなく小学校との関係しかないのが現状である。 
 総合的な学習の時間以外では、私たちの所では独自の活動をしている。例えば、福祉フェスティバルでは小学校の子どもたちにボランティアをしてもらっている。また、年間八回の配食サービスで、地域の独居老人に給食を作って配ったり、会食に来ていただいて、演芸や歌の交流を通して活動している。また、敬老会へも出演。館としては自由研究クラブ・交流シャッフルボード・わんぱく体験等で主体的に働きかけていっている。わんぱく体験では、キャンプやスキーに連れて行く。立花小学校PTAではファーザーズというお父さん方の組織がある。非常に協力的で館とタイアップして、子どもたちにいろいろな体験をさせている。その他、ふれあい手作り教室や交流もちつき大会等の交流活動も行っている。
 
地域と学校をつなぐ公民館 中西
 潮見公民館では各種団体や機関がうまく連携し更に融合して事業を進めるよう努力を続けている。何を進めるにしても人間関係や協力体制が重要であることから公民館は学校と地域をつなぎ、団体と団体とのよき媒介役でありたいと心掛けてきた。公民館は社会教育という立場から青少年教育に取り組む事は与えられた課題だと考え、小・中学校に協力する体制づくりに努めた。 地域の子どもを立派に育てることは大きな財産(人材)づくりであり、使命でもあるという観点から潮見っ子を育てる総合推進体制づくりを意図してきた。スポーツ少年団や子ども会活動、蛍観賞会と蛍を守る会活動、異世代交流事業などを通して小学生との交流の機会は多く親しくなった。
 平成十一年度、総合的な学習の時間が始まるということを前提として、幼・保・小・中、地域団体や公民館関係者、希望者、市教委の各課長、市教育長、市長を含む六十人が生活体験班・子育て支援班・地域指導力の向上班の三つに分かれ八回にわたって総合型学習の取り組み方について調査研究した。小学校の子どもたちは、地域をどうしたら住みやすくなるか、何を改善したらよいか、お年寄りや大人と一緒に町をつくるためには、どうしたらよいか、班で検討し市長さんの前で発表した。大人は反省を含めた発表の中に子どもの事は親に、学校の事は学校、PTAに任せなさいといった時期が十年くらいあった。その事が地域と学校の関係を希薄にしたのではなかろうか。今後は親や学校、幼稚園の立場を尊重しながら地域の人々が総合的に応援する体制を充実させよう。これを実現するためには各種団体の理解と協力が必要だ。等々建設的な発想や問題提起が発表され盛り上がり実行できる事から取り組むことにした。今ここで地域と小・中学校の交流や協力の状況を見ると非常にうまくいっているように思われる。そのことは校長先生をはじめ学校職員、PTA会長及び役員の姿勢と働きによるものでここに大きな鍵があるように感じている。公民館、民生児童委員、少年補導委員、町内会長、高齢者クラブ、ほか各種団体との関係は実によい。これは地域の伝統とも言えるが、これを受け継いでいく校長先生はじめ学校関係者は立派である。数多い公民館の主催事業に参加し、時には大きな役割を受け持って活躍している。       
 
思いを形にし、広げ、継続する 恵美須
 公民館で毎年社会教育セミナーがあり、環境問題について一年に一度勉強する。けれど、具体的な対策を講じない限り一回限りで終わってしまう。それではいけないと女性の仲間で立ち上げ活動を始めた。まず、自分たちが勉強を始めた。平成十二年、EMを使った河川の浄化等で活動されている方の話を聞いた時、私たちの活動のメインはここだ。家庭の中から実践を通し家庭排水をきれいにして川へ流すことを環境活動の原点と決めた。そして、EMの勉強を始め、城川町の普及はもちろん、現在では西予市全体への普及活動をしている。
 地元の高川小学校は、児童が、今は十五人しかいない。でも、自分の子どものような存在だ。子どもたちと一緒に年間の計画を立て、毎月一回学校とタイアップしてEMを使ってEM団子を作る。それを川に投入して河川をきれいにする活動を平成十四年の二月から子どもたちと始めた。これは一回も欠かさず継続した活動だ。私たちは一番皆さんにお話できるものがあるとすれば、この継続性だろう。継続することで子どもたち自身の意識も変わってくる。
 小さな地区だが、粗大ごみは都会と同じくらいある。クリーンアップ大作戦では、放置粗大ごみを地域住民全員で回収。立て札を立てようということになり、全部の子どもの標語を集め立て札を作り、メインの場所から至る所に立てた。そうしたら、翌年は四tトラック四台分が二tトラック二台分になった。立て札を掛ける時の一番のメインは皆さんもご存知だと思うが、強制したり、いけないと言ったりするのでは効果がない。子どもたちの標語は人の心に響くような優しく穏やかな標語が多かった。捨てようかという人に、待ったをかける大きなきっかけとなるとてもよい標語だった。それを立てたお蔭で、今は、粗大ごみの投棄は殆どない。そんな活動をしている。       
 
職場体験・実体験から得ること 清家
 当園では、平成十四年度から毎年、宇和島市の城南中学校・城東中学校の生徒を職場体験で受け入れている。立正保育園の地域との交流の現状からお話させて頂く。
 立正保育園は、戦後すぐに出来た園で厚生省の管轄。小学校・中学校は文部科学省の管轄で、保育園を卒園した子どもがその後のつながりがないのが現状である。    
 就業体験の一番最初は、短大の学生の保育所実習。高校生は家庭科で就業体験学習で実習を兼ねて来ている。また、総合的な学習の時間が出来た当時から、中学生を職場体験学習で受け入れている。当初、保育所は子どもの保育で手がいっぱいなので受け入れをしてもよいものかどうかという話が園の中で出た。しかし、職場体験というだけでなく、今の子どもは兄弟も少ない、小さい子どもとのふれあう機会も少ない。保育所で体験することは、将来親になる人のための生涯学習の一つになるのではないか。また、父親・母親の体験を通して子育てへの支援に地域と一体となってつなげていけるのではないか、ということで受け入れた。体験した子どものお礼状には「弟や妹がいないので小さな子どもがとても好き。子どもがどんなことをしたら喜ぶのかよく分からないけど、職場体験を生かしていろいろなことを学びたい。」「初めておむつを替え、ご飯を食べさせてあげた時は、すごくドキドキした。お昼寝で寝なくて大変だったけど初めて寝かしてあげれた時は、とてもうれしかった。」等とあった。
 小さい子ども・小学生・中学生・障害のある人等、実体験を通してふれあうことが、今大切なのだと受け入れをして実感する。
 
◎交流の成果と課題
 
学校と行政のかかわりを  神野
 子どもたちからの手紙やメッセージをもらうとうれしい。学校の配慮に感謝している。今、本当に子どもたちとのコミュニケーションが取れつつあると思う。子どもの環境教育自体も向上している。
 今回、大生院小学校が県の河川里親制度に登録してもらったことが一番うれしかった。子どもたちが自分たちの川を必ず守るんだという気持ちがうれしい。これを、先生方がどんどん他の学校にも広めていただけたら、大きな一つの輪になって、新居浜市だけでなく愛媛県全体がきれいになるんじゃないかと思う。
 ボランティア活動をしていると行政に頼ることが多い。逆に行政・県・市も学校とのかかわりをもちたいようだ。前回の椎茸の原木でも県の栽培園にお願いしたら、県の方も利用することで喜んでもらった。それから、愛媛の森林基金から木を頂いて、四年生が大生院の山に植えるようにしていた。今回、土石流で危険になり、小学校に木を植えることになった。その時、県も「木を出しましょう、木の植え方を教えます。説明をさせてください。」と言われたほどだ。          
 最後に、現在、地域ではいろいろな活動が行われているので、それらを学校が中心になり、連携を図ることによって、活動を一層充実させてほしい。
 
将来に生きる 藤田
 総合的な学習の時間は、『生きる力』を育てるものである。ここでお話を伺った方々の環境教育を通しての取組の成果は目に見えてあらわれるものがあり、そこで得た経験は子どもたちの脳裏に、生涯にわたって残っていくであろうと思う。    
 『館』では、種々雑多な行事がある。総合的な学習の時間としての成果は、簡単にその場で評価できにくい。しかし、その場での楽しい雰囲気や、朗らかな笑顔が見られたり、充実感を味わったりしている姿や将来、あの時あんなことがあったと立ち止まって考えることなど、目に見えない成果というものを大切にしたい。
 課題としては、『館』の職員は、総合的な学習の時間についてどういうものであるか分かっていないので、学校とどうかかわっていいか分からない。特に中学校では、部活動や生徒指導などで忙しいのでこちらから、一方的に働きかけていくことができにくい現状である。だから、学校の方からこうありたいと言ってもらいたい。
 
人材の活用を 中西
 潮見地区には、一万一千人の人が住んでいる。公民館はここに住むみんなの教育、学術、文化、福祉にかかわっている。みんなが一緒にするために教育行政をどうするか。そういうことを公民館は問いかけることができやすい立場にある。
 潮見では、学校から教育の方針や行事などの情報提供が細かくあるので学校の様子が分かり、協力しようという気になる。お互いが情報を出し合い、歩み寄ることが学校と地域との協力体制をつくっていく上で大切である。これからの世の中では、学校が「学校だけでは立派な子どもが育ちにくい」「地域の人たちが手を貸してくれなければできませんよ」と声を大にして言うべきである。今は家族全員が子どもにかかわるような時代になってきている。地域のみんなが子どもにかかわる社会にしていきたい。
 それぞれの学校の校区にいるその道で生きてきた人に、力を借りることが、総合的な学習では必要ではないか。
 私は広島に落ちた原爆の光を直接見た経験があり、今は平和の語り部として活動している。平和の語り部として学校で話をする機会があった。 例えば、潮見小学校では、全員の児童が目を輝かせてとてもよく聞いてくれた。
 広島に行って実際に原爆ドームを見せる、それをレポートにまとめる、といった学習を段階を追って行っており、先生方がしっかり課題意識をもたせている。生きる力を育むためにはどうしたらいいか。そういうことを常に考えながら仕組んでいるな。そんなことを感じた。
 また、鴨川中学校の体験学習では、公民館と中学校が一緒になって田んぼの稲刈りをした。「昔は、一反刈りよった。」というと、子どもたちはびっくりした。昔は「一人前とは、あいさつができること。人のことが考えられることだ」という話をした。
 総合的な学習の時間では、子どもが学びやすい場所、雰囲気、方法を工夫してほしい。
 ある大学で、ひめゆりの塔などを見学した後、海岸に座って戦時中の話をすると、皆が感動して肩を組んで泣いたそうだ。その時の体験を、学生たちは卒業してからも覚えているそうである。教育には、感動が必要である。
 
行動力と研修の充実 恵美須
 先ほどお話しましたが、高川小学校では、地域の川の美化活動に取り組んでおり、休日の活動にも、先生が交代で出てくれて、子どももほとんどが参加してくれて継続した活動をしている。半年かかってやっときれいになった川を見て、川を汚すことは簡単なことだけど、それを元に戻すことがどんなに大変か実感をもって学んでくれた。机上の学習では、本当に学べない体験ができたと思う。今日はしんどいなと思いながらも、頑張って同じ作業を続ければ毎日川が変わる。自分たちがしていることで、目の前できれいになっていく。継続性のある活動で子どもが変わるのである。
 ゲストティーチャーとして小学生にかかわった。小学校での講話の中で、EMの微生物を使って発酵させたものを川に流せば川はきれいになる話をした。
 その話を聞いて、それだったらすぐにでもできる。「すぐやってみましょう。」と言ってくださった女性校長のこの行動力が大切である。
 一ヶ月ほどして再び小学校を訪れたとき、小学生が「これを見て、私たちはこの発酵液を使って床を掃除したらとてもピカピカになったよ。」といって声をかけてくれた。このときは、飛び上がるほど嬉しかった。トイレや手洗い場にも入ったらステッカーが貼ってあり、『ここはEMの発酵液を使って掃除しています。』と書いてあった。発酵液のスプレーが置いてあって、これを使って掃除しているのだということが分かって、とても感動した。このときの感動が、今の活動の原動力になっている。
 問題点は、中学校になると勉強や部活動などで学習の継続ができなくなってしまうことである。今では、中学校の方も協力してくれるようになり、中学生も活動に参加できるようになってきた。中学生も自分でテーマを決めて活動に取り組むなど、レベルアップしている。しかし、普通はそれがとぎれてしまい残念である。
 環境問題を机上の学習に終わらせないためには、自分の地域を知ることが大切です。遠足などの行事では地域のことに詳しい人から説明を聞くとすばらしい活動になる。環境マイスターとして登録されている人が愛媛県には多くいるので、是非こういう人たちを活用してほしい。
 また、先生方も、環境に関する研修をしてほしい。
 西予市では、校長会、教頭会で勉強する機会を設け、実際にEMを使ってダンゴやボカシをつくり、子どもと一緒に活動するプログラムを実施した。このような、研修の機会を多く設けてほしい。
 
司会 小中の連携、連続性、地域の人材の発掘が大切ですね。
 
実体験を大切に 清家
 職場体験で、子どもが保育園に来て、実際に保育を体験することは、大切なことである。保育を体験することは、将来の子どもを育てる親になるための教育につながると思う。職場体験で来た生徒の感想には、自分の卒園した保育園に来てみたかったという内容が多かった。このことによって地域のつながりができ、やがて将来に役立つのではないかと考える。
 今現在、保育園で子育て支援センターを開設しているが、子育ての悩み相談に来る母親の話では、どう育てていいか分かっていない現状がある。例えば、ミルクを作るための湯冷ましはどこに売っているのでしょうかと聞くなど、冗談みたいな話を聞いてくる母親がある。
 実体験の少ない世代が今の親になっている。学校教育の中で、そんな実体験をすることが大切であると感じる。
 課題としては、総合的な学習の時間の職場体験でやってくる生徒は、限られた時間でくるので、お客さんみたいな感覚でやって来ている。現場の保育士からは、生徒に実体験をさせようと一生懸命にやっているのだから、引率の先生も一緒になって体験してほしいという意見も出た。
 
今後の課題と提言 司会
 今後の課題についてですが、総合的な学習の時間の一層の充実を図るように学習指導要領の一部改正があった。文部科学省の調査では、家庭でも学校でも、子どもが主体的になり、思考力や表現力などの生きる力がついたなど総合的な学習の時間の効果を認めている。反対に問題点として、目標がはっきりしていないこと。体験だけで終わっているではないか。他の教科と関連していなければならないのに、それができていないのではないか。子どもたちに十分な力がついているかどうか、それが検証できていないのではないか。などがあげられている。今回の改正で、目標や内容をしっかり定めようということ。全体計画をつくっていくこと。図書館の利用と連携。地域教材、地域の学習環境の積極的な活用や工夫などが明記された。
 教員の悩みとしては、時間確保が難しいという回答が七割ほどある。発展性や系統性をつけること、経費的な面も問題であるなどいろいろと問題がある。
 こういう点に気を付ければ、生きる力がもっと育まれていくのではないかという学校への提言をしていただきたい。
 
◎学校教育に望むこと
 
学校に望むこと 神野
 まず、学校はあまり規制をしないようにお願いしたい。例えば刃物について。私が子どもの時は、小刀をもっていて鉛筆を削ったり、チャンバラに使う刀など自分で削って作ったりしていた。それをやったときに、手を切ったりすることもあるが、痛みというものがよく分かるのではないか。もう1つ、もっと外で遊んでほしい。昔は、川遊びもよくした。魚を釣ったり仲間といろいろ工夫したりして遊んだ。たまにはけんかもしたりしたが、そんな中、学校で自然に対する力も備わり、連帯意識もできた。汚いといわれていた「うずい川」がきれいになり、その川で遊ぶ子どもを見ると嬉しい。悪いことをしていたらこちらもきちんと注意する。大きな目で見てやることも必要ではないか。
 次に、先生方にお願いしたいことの1つ目は、学校生活の中で、子どもの感性は、3歳から14歳で身に付くと言われている。その間に、その子どもが何に向いているのかどんなことが得意なのかを、見つけてやってほしい。 
 2つ目は、きれいな日本語をつかってほしいということだ。
 3つ目は、今回の台風で洪水などの被害が出たが、学校で雨と地球の温暖化(異常気象)や防災についての学習をしてほしい。いかにして自分の身を守るかなど子どもの頃からきちんと学んでおくべきである。
 
外部との積極的な連携 藤田
 学校教育として、学校がねらっているということを、十分理解した上でかかわることが大切である。   そのためには、校長先生の方から、学校の教育方針や具体的な支援要請について、外部に向けて公表してほしい。学校と地域が、連携することはとても大切だが、小学校の場合、外部との折衝は、ほとんど教頭先生が担当している。また、総合的な学習の時間やその他の活動の窓口は、たくさんあるが対応が不十分であり、それが教頭先生に大きな負担がかかっているのが現状である。外部との連携を強めるにも、きちんと役割分担を決めて、先生方が積極的に地域に出ていくことが大切である。        
 
情報交換を大切に 中西
 私は、潮見小学校の学校評議員としてかかわっているので、学校との交流が密である。一年間を通して評議員の会などが何度かあり、交流や情報交換が盛んにできている。学校との連携を強めていくためにも、この情報交換が何よりも大切である。  
 今の子どもは、我々が頭の中だけで思い描いているのとは、かけ離れた状態にある。だから、子どもが何を悩み何を求めているのか先生も大変だけど理解しようとする姿勢が大切である。     
 そして、尊敬される先生になってほしい。なぜならば尊敬している先生の教えは心に響くからである。愛情と魂のこもった熱意をもって人間らしい人間としての心の教育をしてほしいと願っている。
 
保護者の意識を高める 恵美須
 清家先生の所でやっておられる体験学習で受け入れる側の保育園とか施設とかは大変ご苦労されているだろう。小さい子どもを育てることの大変さを全ての子どもたちに体験させてほしい。違う面が出せる所であってほしい。さらに、いろいろな職場で多用な体験ができたらすばらしい教育の一端になるだろう。
 子どもたちは一生懸命になって活動をする。地域の中で私たちも一生懸命やっているが、家庭からは何の反応もない。私たちが課題にするのはただ一つ。活動するときに送り出す家庭だ。家庭との接点がほしい。家庭の方から子どもと一緒にやってみよう、教えてもらおうという声が上がってきたら本物の活動になる。子どもまかせで、家庭は知らん振り。そこが、先生方のご苦労される原点になっているように思う。何でも塾や学校がやってくれるだろうというような親の考えが根底にあって、尊敬される先生とか尊敬したい親も生まれてこないというのが現実ではないか。子どもを中心にして接点が生まれると、なお、充実した教育ができるだろう。私たちの世代はそれができるようになり、お返しできる時代になった。できる者ができるように協力することが、私たちに望まれていることだと思っている。 
 
生活面でも充実した教育 清家
 教育と保育、言い方は違っているが、基本的な部分については、子どもたちの生活面・心の面を含めてが教育である。以前、保育士の採用で短大の説明会に行った時、就職担当の先生との懇談の中で、ある園長が「保育士としての学力だけではなく、生活面での態度とか人に対する思いやり等、短大でも指導して欲しい。」と話を出した。すると、「大学は専門教育をする場所なので個人の生活面を教育する場所ではない。それは大学に入って来る以前の教育が問題だ。」と言われた。それをさかのぼっていくと高校は大学へ、中学は高校へ入学させるため場所と捉え、人間の心の在り方を教育する場所をどんどん転嫁していくと、幼稚園・保育所の責任なのかということになる。その幼稚園や保育所の子どもたちを短大を出た保育士たちが教育する訳だから、決して切り離して自分の所の責任ではないと言い切れない。教育と生活面は切り離して考えられることではないと思う。親も含めて、子どもの将来に向けていろいろな垣根を取り払ってみんなで考え、みんなが子どもの教育にかかわっていける体制が一番大切だ。   
 
おわりのあいさつ 局長
 具体的で且つ多様な活動の様子をお話いただき、有意義な教育座談会を開くことができました。
 皆様方とともに地域やいろいろな活動場所で学べている子どもたちは目を輝かせたり心を躍らせたりしながら、生きる力を学んでいるなと思いました。今後の愛教研の活動に生かしていこうと思っています。
 今後、ますますのご理解・ご協力をいただきますようお願いし、終わりのご挨拶とさせていただきます。   

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