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愛媛県公立小・中学校の情報教育の状況








 

 平成13年1月25日、文部科学省より「21世紀教育新生プラン:学校、家庭、地域の新生~学校が良くなる、教育が変わる~」が発表された。この教育新生プランは、「新生日本」の実現を目指し国政の最重要課題の一つに位置付けられる教育改革の今後の取組の全体像を示すものとして、「学校が良くなる、教育が変わる」ための具体的な主要施策や課題及びこれらを実行するための具体的なタイムスケジュールを明らかにしたものである。

 このプランの「基本的考え方」の中で文部科学省は、我が国の教育が第2次世界大戦後、機会均等の理念を実現し、国民の教育水準を高め、経済社会の発展の原動力としてきたこと。しかし、現在の教育が、国民や社会の教育に対する信頼が大きく揺らぎ、我が国の教育が危機に瀕していることに触れている。さらに、その原因や現状を大きく次の3つの視点から捉えている。

 第1は、少子化や都市化の進展、家庭や地域社会の「教育力」の著しい低下などを背景として、 我が国の教育は、いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、凶悪な青少年犯罪の続発など深刻な問題 に直面していること。また、個人の尊重を強調する余り「公」を軽視する傾向が広がり、青少年が 「孤の世界」に引きこもる傾向が現れていることである。

 第2は、行き過ぎた平等主義による教育の画一化や過度の知識の詰め込みにより、子どもの個性 と能力に応じた教育がややもすれば軽視されてきたことである。

 第3に、科学技術の急速な発展、経済社会のグローバル化、情報化など社会が大きく変化する中 で、これまでの教育システムが時代や社会の進展から取り残されつつあることである。

 このプランが発表されて以来、様々な面で教育行政や学校教育全体が「改革」に向かって動き始めている。特に、改革の進展が強く感じられるのが、第3番目の情報化への対応、教育システムの改善であろう。

 学校の情報化への対応と情報教育の推進にあたり、愛媛県下の小・中学校では、愛媛県教育委員会と愛媛県教育研究協議会が合同で作成した「研究の手引~情報教育~」を基本的な考え方として研究と実践を進めている。



 平成14年6月に文部科学省より、「情報教育の実践と学校の情報化~新『情報教育に関する手引』~」が発表された。

これは、平成2年7月に文部省より発行された「情報教育に関する手引」を全面改訂したものである。前回の手引と今回の手引きを読み比べることで、この12年間の情報化の進展の激しさと、これからの情報教育のさらなる発展の方向性と必要性が理解できる。すべての学校がこの手引きの示す方向性を理解し、実践し、学校の情報化をいっそう進展していくことを願っている。







 研究の手引の研究主題および研究のねらいに沿って、平成13年12月の調査結果および各支部からの活動報告等を分析し、愛媛県下の公立小中学校全体の情報教育の進展状況を考察する。



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 1  教育用コンピュータとソフトウェアの整備    

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 県下の各学校の情報教育環境の整備がいっそう進展した。特に、小学校へのコンピュータの整備が充実し、小中学校とも約8割の学校が二人に1台のコンピュータ環境を実現した。また、一人に1台(40台環境)の整備を達成した小学校が増えてきている。

 しかしながら、県下にはまだコンピュータが整備されていない学校が残されており、早くから導入され日常的に活用しているいる学校との開きがいっそう広がっている。

コンピュータ技術の進歩が早く、数年前に導入したコンピュータが使いづらくなっている学校も多い。MS-DOS、Windows3.1、Windows95、Windows98、WindowsME等、いろいろなOSが混在し、児童生徒が利用する上で混乱したり、有効なソフトウェアが動かなかったりすることも多く、いろいろな

面での問題点が残されている。  






本年度調査:学習用コンピュータ設置基準達成校

小学校1校当たり 二人に1台 達成校 371校中 285校(76.8%) 昨年度(63.9%)

 中学校1校当たり 一人に1台 達成校 152校中 123校(80.9%) 昨年度(77.8%) 

 長引く不況により、各自治体の教育予算は伸び悩んでいるが、コンピュータの低価格化と不況に伴うデフレーションによりハードウェアや設置コスト等が下がっている。コンピュータ教室の整備には、従来ほど大きな予算が必要でなくなった。各市町村は、一刻も早く環境の整備・拡充を達成するように努めなければならない。



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 2 インターネット環境の整備・ESnetの活用、校内ネットワーク(LAN)の整備

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 今年度も県下すべての学校についてインターネット接続の有無を調査した。その結果、全体90%以上の小中学校がインターネットに接続可能となったことが分かった。学校のWebページを公開したり、インターネット利用ガイドラインを設置した学校も増えている。また、インターネットへの接続方法も、CATV回線、専用線接続、ADSL等により高速化が図られてきている。

 現在、本委員会ではすべてのインターネット接続校の学校のメールアドレス、WebページURLの

調査結果をまとめ、愛教研ホームページにリンクする作業を進めている。







 本年度調査:インターネット接続校  

 小学校  371校中 345校(93.0%) 昨年度(75.1%)

 中学校  152校中 145校(95.4%) 昨年度(90.8%)

 今年は、インターネットに接続した小学校が大きく増加した。これまで、小学校の接続は中学校と比較して大変遅れていたが、コンピュータの新規導入やリプレースに伴い、インターネットに接続した学校が増加した。今後は、授業での利用を円滑に行うため接続方法のブロードバンド化を図りたい。

 教職員がインターネットを活用し、メールによる連絡業務やWeb検索による教材研究等に活用す

るようになってきた。教職員の利用率は、次の通りである。







 本年度調査:教職員個人のインターネット利用率

 小学校  5,758人中 3,788人(65.8%) 昨年度(50.8%)

 中学校  3,414人中 2,365人(69.3%) 昨年度(48.4%)

 愛媛県教育委員会は、ESnetの機能として、県下のすべての教職員に無料でメールアドレスを配布した。このメールは、Webメールであり、ESnetに加入しているいないにかかわらず、インターネット環境さえあれば、すべての学校や家庭からメールの送受信が可能となる画期的な機能である。しかし、非常に残念なことに、このメールの利用方法やパスワードの管理などについての教職員に対する利用の周知徹底や利用方法の研修等が図られていない。そのため、今回の調査でも利用がほとんど進んでいないことが把握できた。全教職員が電話やFAXに代わる連絡手段として利用したり、教育委員会や教育センターからの事務連絡や教育情報の提供の方法として強制的に利用するよ

うに仕向けていかなければ、今後の利用は進みにくい。







ESnetのWebメール利用者

 小・中学校 9,172人中 106人(1.2%)

 本年度、本委員会の委員間および教育委員会・教育センターの職員との事務連絡はすべてこのWebメールを利用してきた。大変円滑に利用することができた。さらに、本委員会の主催する各種研修会においても、このWebメールの使い方を研修の内容に取り入れ、積極的に普及に努めている。

 県の提供するメールであり、ウィルスの自動チェック機能も充実している。確実に届き、無料で安

心して利用できる。これを機会に、すべての教職員がメールを活用すべきである。







 ESnetへの接続率(平成13年1月31日現在:愛媛県総合教育センター調べ)  

 県立高等学校・諸学校   100%

 公立小学校          19.4%

 公立中学校          22.5%

 愛媛県の進めているESnetであるが、まだ始まったばかりであるが、接続する学校が増えている。今後順次、増えていく見込みであるが、未加入の市町村の学校にとっては、ESnetの内容が見えないこともあり、宣伝不足の感は否めない。

 すべての学校がネットワークで結ばれてこそ、ネットワーク化の意味があり活用も進むものと考える。県が各自治体やすべての学校に対してさらに積極的に利用を働きかけ、ネットワークの完成を促進してほしい。本委員会も微力ながらいろいろな場面においてESnetの利用を働きかけている。

また、各市町村の積極的な参加が得られるように、ESnetに多くの教育情報や教材データベースを整備するとともに、教育用ポータルとしての機能を充実し、いっそう魅力ある実用的なネットワークを実現することが必要である。そのためには、すべての学校からESnetの運営に協力し、様々な情報を提供していくことが大切である。

 文部科学省は2005年を目標として、各教室、特別教室、図書館等のすべての教室へコンピュータを配置し、校内ネットワークの整備を進め、すべての教室からインターネットが利用できる環境の実現を目指している。

 愛媛県でも、県立高等学校はその目標をほぼ達成している。公立小中学校においても、先進的な研究として校内ネットワークを導入した学校があり、大きな研究の成果が報告されている。しかし、先進的な学校でさえ、すべての教室に端末を常設するまでには至っていない。

 今後、ネットワーク導入のための予算の確保、管理運営のノウハウと管理ができる教員の育成が最

大の課題である。



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 3  ネットワーク環境におけるセキュリティについて

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 学校のネットワークは、セキュリティに関する対策の強化は不可欠である。近年、ネットワーク化の進展に伴い、悪意のあるWebページやウィルスの急増、ハッカー等による他人のコンピュータへの侵入、インターネットを用いた犯罪等が急激に広がっている。その結果、ネットワーク社会全体が大変不安定な、信頼性を欠く社会へと向かってしまったことは、大変残念なことである。

 今年度の調査でも、インターネットを利用する際、児童生徒が誤って有害情報を見てしまったり、学校のコンピュータがウイルスに感染したりした事例が報告されている。特に、今年度はウィルスの被害が増大した。nimda、Ariz、badtrans等をはじめ様々なウィルスがメールやネットワークを通じて学校のコンピュータに感染した。ウィルスの影響で学校のネットワークが停止した市町村も出ている。

 本委員会が昨年11月に愛媛県下の公立小中学校のすべてに対して、アンケートを実施した。アンケートは、各学校にエクセルのワークシートで配布し、e-mailで回収した。その際にも、いくつかの市町村からのファイルにウイルス感染が見つかった。

 学校教育では、児童生徒をこのようなネットワーク社会の「影」の部分から守るとともに、そのような社会で正しく生きていく方法や情報モラルについて適切に教えていくことが必要となる。

 授業に用いるネットワーク環境は、児童生徒がインターネットを検索する際に、有害な情報を可能な限り遮断する必要がある。学校や教育委員会のサーバー等にフィルタリングソフトを導入し、有害な情報をふるいにかけるとともに、メールによるウィルスを除去したりすることが必要である。

 また、学校や市町村教育委員会等のインターネット接続の各端末には、ファイアーウォールを導入し、インターネットからの第三者の侵入を防ぐ必要がある。

 さらに、教師個人や職員室などのコンピュータに、児童生徒の個人情報などを入れている場合には、インターネットに安易に常時接続してはならない。その際に、セキュリティ対策をとっていないと、インターネット側から第三者に侵入され、個人情報などを盗まれる可能性がある。校内ネットワークが普及しつつあるが、同じ学校内でも児童のネットワークと教職員のネットワークを別のネットワークにしておなかければ、児童生徒が教職員のネットワークに誤って侵入してしまうことが起こりうる。

万が一児童生徒等の個人情報が盗まれたり、流出したりした場合は、大変な責任問題となることは言うまでもない。各教師のコンピュータを学校のネットワークに接続する際には、ネットワークコンピュータのプロパティから「共有サービス」を削除し、外部から見えないようにするべきである。また、学校内の個人情報を入れているコンピュータは、出来るだけインターネットに接続しないか、セキュリティを万全にする必要がある。

 このように教職員は、学校のネットワークのセキュリティに対して、いっそうの関心をもちながら利用していく必要がある。無関心で運用していると、必ずトラブルを招くこととなる。しかし、ネットワークの管理運用に関しては、かなり専門的な知識と技能が必要である。教職員にとっては大変な負担となるが、校内の誰かが運営管理者となって責任を負わざるをえない。本委員会も来年度以降の研修会では、学校のネットワーク管理やセキュリティに関する研修会を充実する必要を感じている。

 幸い、愛媛県にはインターネットのセキュリティやインターネット犯罪の防止について検討する組織「愛媛県ネットワーク防犯連絡協議会」があり、学校教育に対しても多面的な支援をしている。本委員会も、このような組織との連携を強め、委員が研修会やセミナーに積極的に参加し情報交換して

いる。

 また、各学校をESnetへ接続することで、フィルタリングやウイルス対策において、大変安心した利用ができるようになる。未加入の学校はESnetに早く接続し、愛媛のすべての学校のネットワーク化の完成を急ぐべきである。



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4  コンピュータ等の授業での活用

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 県下の各小・中学校において、情報教育環境の整備、教職員研修の充実に伴い、授業におけるコン

ピュータ利用が広がりを見せてきている。







本年度調査:今年度コンピュータ等を使った授業実践をした教員

  小学校  5,758人中 3,065人(53.2%) 昨年度(49.8%)

  中学校  3,415人中 1,115人(32.7%) 昨年度(38.3%)

 小学校においては、新学習指導要領への移行を十分考慮し、各教科や総合的な学習の時間における活用が広がってきた。今年度は、小学校の教員の過半数がコンピュータを活用した授業実践を経験した。これに対して中学校では、技術・家庭科を中心にコンピュータ利用が定着しているものの、それ以外の教科等においての利用が進んでいない。今年度の調査では、授業をした教員数が全体の3分の1に減少してしまった。中学校においても、総合的な学習の時間をはじめ多くの教科等における日常的な利用をいっそう研究し、実践していく必要がある。

 小学校新学習指導要領、第1章第5の2(8)では、コンピュータ等の利用について、

  各教科等の指導に当たっては、児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段 

 に慣れ親しみ、適切に活用する学習活動を充実するとともに、視聴覚教材や教育機器などの教 

 材・教具の適切な活用を図ること。  

 中学校指導要領 第1章第6の2(9)には、

  各教科等の指導に当たっては、生徒がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段 

 を積極的に活用できるようにするための学習活動の充実に努めるとともに、視聴覚教材や教育 

 機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。  

 また、コンピュータとインターネットが中学校に先に導入され、小学校に遅れて導入されたことで、小学校のコンピュータやネットワーク環境の方が中学校を上回ってしまった事例が多く報告されている。そのためか、本来は中学校で教えるべきリテラシーを小学校で先行的に教えてしまっう場合や小学校の方が中学校より高度な利用をしたりする場合が起こりうる。今後、小中学校間で連携し情報教育の体系や系統性についての研究を充実し、この問題を積極的に解決していく必要を感じている。



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  5 すべての教員のコンピュータ等の操作能力・指導力の育成

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 情報教育環境の整備に伴い、各学校での情報教育校内研修が充実してきた。また、今年度は昨年度にも増して、市町村単位での大がかりな研修会が充実してきたことが報告されている。市内の管理職も含む全教職員に情報教育研修を義務づけ、研修会を充実した市の取組も報告されている。

 本委員会も、夏季休業中に実技研修会を主催し、東・中・南予の3会場において多数の教職員の研修に携わることができた。研修内容も工夫し、できるだけ参加者の期待に沿うよう努めてきた。

 しかし、このような各方面での研修への努力にも関わらず、学校による研修の充実度や意識が依然として解消されていない。情報教育環境の整備、管理職や指導的立場の教員の理解とリーダーシップ、教師のゆとり等、いろいろな要素をいっそう改善しながら地道な努力を各学校で進めて欲しい。

 今年度の調査では、個人でコンピュータを所有する教職員が、小中学校とも8割を越えた。これは、

学校の情報化において、大変すばらしい進歩である。







 本年度調査:教職員のコンピュータ所有率

 ・小学校  5,758人中 4,999人(86.8%) 昨年度(74.5%)

 ・中学校  3,414人中 2,778人(81.4%) 昨年度(72.4%)

 一部の教職員が自分のコンピュータを職場で活用することが他の職員に刺激となり、学校の情報化が進んでいく場合がほとんどである。コンピュータの得意な教職員は、より積極的に他の職員に教えたり助けたりしてかかわっていって欲しい。また、残りの2割の教職員は、諸事情はあるとは思うがこの機会に教師としての研修の一つとして、また仕事に役立てる道具の一つとして、自分のコンピュータを是非持って欲しい。それが上達の一番の秘訣であることは言うまでもない。我が国の教育の情勢を考えると、教職員にとって、コンピュータの活用は避けて通ることはできない。コンピュータが分からない、必要ないという考えは、もはやその教師だけの問題では済まされない。その姿勢が児童生徒へ与える影響や被害は多大であり、絶対に許されるべきことではない。

 県教育委員会や教育センター主催の研修も今後いっそう充実していくものと考える。各学校においては、近隣の学校間や教育委員会や教育センター等と連携を密にし、外部からの支援・協力も有効利用しながら今後も情報化への対応を進めて欲しい。



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 6 学校の情報化支援のための体制の整備

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 各都道府県の教育委員会の教育事務所や教育センターへの情報教育推進のための専任者(情報化推進コーディネータなど)の配置が文部科学省の計画に示されている。しかし、県下にはまだその配置はあまり進んでいない。学校のネットワーク化が急速に進む現在、学校内や自治体内におけるコーディネーターやネットワーク管理者の配置が最重要課題となている。学校への指導・助言、質問への対応、各種調査やデータベース作成、ネットワークを使っての連絡業務、ソフトウェアやカリキュラム開発等の学校の情報化全般に携わる専任者が必要なのである。このような人的環境の整備を一刻も早く実現してほしい。

 さらに、各教育委員会の担当者や教育センターは、その機能を今後いっそう拡大し、各学校への働きかけや情報の提供を充実することを願っている。

 最後に、愛媛の情報教育を進めていく原動力は、教育の最前線に立つ我々教職員である。コンピュータや情報教育に詳しい教職員は、ボランティア精神をもって愛媛の教育の情報化に身を捧げて欲しい。本委員会も微力ではあるが、さまざまな面で積極的に学校や教職員一人一人に対して協力していきたい。

 本委員会が中心となって運営している「愛教研のホームページ」は、インターネットを通して教職員間、学校や教育行政間、県民との結びつきを深め、愛媛の教育のために少しでも役立つことを目指している。是非ご覧いただき、ご意見やご感想をお寄せいただきたい。

 


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